第9章 AIに関する法律と契約

問題1. 個人情報保護法を遵守したデータの収集、活用に関する留意点として、最も不適切なものを選べ。

➡ P240

解答1. B

➡ P234

個人情報保護法を遵守したデータの収集や活用における留意点について問う問題です。
顧客の行動をAIによって予測する場合など、AIを活用する際には顧客の個人情報を含むデータを扱うことがあります。そのようなデータを利用する際には、個人情報保護法を遵守する必要があります。
個人データ[解答2を参照]とは、データ化された個人情報のことです。個人情報を扱う際には、個人データの漏えいや滅失の防止といった安全管理措置を講じる必要があります(A)。
個人情報を取り扱う際には、データの処理方法に関わらずその利用目的を本人に通知または公表しなければなりません(B)。
個人識別符号とは、それ自体から特定の個人を識別できる情報です。指紋データや旅券番号などは個人識別符号に該当し、個人情報保護法における個人情報として保護されます(C)。
なお、人種や社会的身分などのように、本人に対する不当な差別や偏見が生じないように特別な配慮を要する個人情報は、要配慮個人情報と呼ばれます(D)。

試験対策

個人情報保護の観点からみたデータの取扱いにおける注意点について整理しておきましょう。

問題2. 個人情報に関する以下の文章を読み、空欄(ア)(イ)に入る語句として最も適切な組み合わせを選べ。

( ア )は、特定の個人情報を容易に検索できるよう整備された「個人情報データベース等」を構成する個人情報である。( イ )は( ア )のうち、個人情報取扱事業者が、開示や第三者への提供の停止などを行う権限を有するものをいう。

➡ P240

解答2. D

➡ P234

個人情報保護法における個人データ、保有個人データについて問う問題です。
個人データは、「個人情報データベース等」を構成する個人情報を指します(ア)。「個人情報データベース等」とは、特定の個人情報を容易に検索できるよう整備されたものをいいます。たとえば、あるサービスにおいてユーザーの氏名などの登録情報を検索可能なデータベースで管理しているとき、そのデータは個人データであるといえます。
また、個人データのうち、個人情報取扱事業者が開示や第三者への提供の停止などを行う権限を有するものを、保有個人データと呼びます(イ)。委託を受けて取り扱う個人データは、委託先と開示等の特別な取り決めをしていない場合、保有個人データには該当しません。
なお、個人情報保護法において、特定データや共有個人データという用語は定義されていません。
以上のことから、(ア)に個人データ、(イ)に保有個人データが入ります(D)。

試験対策

個人データ、保有個人データの定義を覚えておきましょう。

問題3. 個人情報を含むデータを扱う際には、個人を特定できないように情報を加工することが望ましい。個人情報保護法において、「個人情報に含まれる記述等の一部を削除するなどにより、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように加工した個人に関する情報」を指す用語として、最も適切なものを選べ。

➡ P241

解答3. C

➡ P234

仮名加工情報および匿名加工情報に関する知識を問う問題です。
個人情報を含むデータを扱う際には、個人を特定できないように情報を加工するのが望ましいといえます。このように加工された情報は、その性質によって仮名加工情報または匿名加工情報と呼ばれます。
仮名加工情報とは、個人情報に含まれる記述の一部に削除などの加工を施すことで、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないようにした情報のことです(C)。加工した情報単体からは特定の個人を識別できないようする必要がありますが、加工した情報を他の情報と組み合わせることで個人が特定できる状態であっても構いません。たとえば、氏名をユーザーIDで表し、そのIDと氏名との対応を別のデータベースで管理する場合などがこれに該当します。
一方、匿名加工情報とは、個人情報に含まれる記述の一部に削除などの加工を施すことで、特定の個人を識別できないようにした情報のことです。他の情報との組み合わせによっても個人を特定できない状態にする必要があるため、仮名加工情報よりも匿名性の高い情報になります(D)。
なお、個人情報保護法において、仮名個人情報や匿名個人情報という用語は定義されていません(A、B)。

試験対策

仮名加工情報、匿名加工情報の概要を理解しておきましょう。

問題4. 以下の文章を読み、空欄(ア)(イ)に入る語句として最も適切な組み合わせを選べ。

( ア )は、2018年に施行されたEU内の個人データ保護に関する規則である。( ア )は日本の事業者に対して適用されることが( イ )。

➡ P241

解答4. A

➡ P235

GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)に関する知識を問う問題です。

GDPRは、欧州連合(EU)を含む欧州経済領域(EEA)の域内で取得した個人データやプライバシーの保護に関する規則であり、2018年に施行されました(ア)。GDPRはEU域外の事業者にも適用されるため、日本の事業者も適用対象となります(イ)。
なお、GLUE(General Language Understanding Evaluation)は、自然言語処理において複数のタスクを対象としたモデルの精度評価を行うためのベンチマークです。
以上のことから、(ア)にGDPR、(イ)に「ある」が入ります(A)。

試験対策

GDPRの概要を覚えておきましょう。諸外国のデータやAIに関する規則や法律は、日本の事業者にも影響を与えることがあります。

問題5. AIやデータの利活用時には、著作権法を遵守する必要がある。著作権法に関する説明として、最も不適切なものを選べ。

➡ P242

解答5. B

➡ P235

AIやデータの利活用と著作権法との関連を問う問題です。
著作物をAIの学習データとして利用する場合や、生成AIによる生成物の著作権の扱いなど、AIを活用する際は著作権法におけるデータの利用条件に留意する必要があります。
著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています。令和5年度著作権セミナー(文化庁著作課)によると、生成AIの自律的な生成物は人間の「思想又は感情」を表現したものではないため、その生成物は生成者の著作物には該当しないと考えられています。一方で、あくまで生成AIを道具として活用し、入力データや生成結果の選定方法などに創意工夫を凝らして「思想又は感情を創作的に表現した」と評価できる場合には、その生成物は生成者の著作物にあたる可能性があります。ただし、たとえばText-to-Imageモデル[第6章 解答46を参照]において「黒い服を着た男」などのように、一般にありふれた短文の入力から生成された画像は「思想又は感情を創作的に表現した」とはいえず、生成者の著作物にはあたらないと考えるのが一般的です(A)。
また、AIの学習を含め情報解析を目的とする場合は、その目的の営利・非営利を問わず、著作物を著作権者に無断で利用することができます(著作権法第三十条の四)。この法律によって、たとえば、学習データの収集時に著作権者に許諾を得る工程が不要になり、効率的に収集を行うことが可能になります。ただし、著作権者の利益を不当に侵害することになる場合は、この限りではありません(B)。
さらに、著作物は表現として定義されているため、作者の画風や世界観などは著作権保護の対象になりません。そのため、生成AIによる生成物に学習で使用した著作物の著作権が及ぶか否かを判断する場合、その著作物の創作的表現が生成物に残っているか否かが焦点になります。学習で使用した著作物の創作的表現が生成物に断片的にも残っている場合は、著作権侵害になり得ます(C)。
前述のとおり、生成AIによる生成物に著作権が認められるかどうかは、「創作意図」や「創作的寄与」の有無によって判断されます。ただし、生成AIの利用に関して利用規約が定められている場合は、著作権とは別にその利用範囲が制限されることがあります(D)。

試験対策

AIやデータを利活用する際の著作権法上の留意点を整理しておきましょう。

問題6. AIの開発における知的財産に関する以下の文章を読み、空欄(ア)(イ)に入る語句として最も適切な組み合わせを選べ。

AIを開発する際に収集した学習用データセットは、( ア )として認められる可能性があるが、一般に( イ )としては認められない。一方、学習で使用されるプログラムは( ア )および( イ )として認められる可能性がある。

➡ P243

解答6. D

➡ P236

AIの開発における学習用のデータセットやプログラムなどの成果物と、知的財産基本法による保護との関連を問う問題です。
知的財産とは、知的活動によって生み出されるアイデアや著作物、営業秘密などを指し、知的財産権による保護の対象になります。
著作物は、思想または感情を創作的に表現したものです。学習用データセットは、情報の選択または体系的な構成によって創作性を有する場合は著作物として認められます。また、学習用プログラムについても、プログラムそのものが著作物として認められる場合があります(ア)。
一方、特許法では発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しています[解答7を参照]。また、特許法ではプログラム(「電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたもの」と定義される)や、それに準ずるものを発明の対象として認めています。AIを学習するためのプログラムも、その新規性や進歩性によって発明として認められる場合がありますが、学習用データセットに関しては、情報の単なる提示に該当するとされ、発明とは認められません。
また、不正競争防止法における営業秘密[解答8を参照]とは、非公知性、有用性、秘密管理性の3つの要件を満たす情報を指します。そのため、学習用データセットや学習用プログラムは、これらの要件をすべて満たす場合に営業秘密として保護されます。
以上のことから、(ア)に「著作権法における著作物」、(イ)に「特許法における発明」が入ります(D)。

試験対策

AIの開発における成果物が、知的財産としてどのように保護されるかを整理しておきましょう。

参考

学習済みモデルについては、発明や著作物として保護できるか議論が分かれます。一方、一定の要件を満たすことで営業秘密として保護することは可能です。

問題7. 特許法における発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。知的財産基本法および特許法に関する記述として、最も不適切なものを選べ。

➡ P244

解答7. D

➡ P236

特許法における発明に関する知識を問う問題です。
特許法では、ある発明が特許を受けるためには、その発明が新規性および進歩性を有している必要があるとされています。新規性については、「特許権が付与される発明は新規な発明でなければならない」とされています。また、発明の属する技術の分野で通常の知識を有する技術者が、容易にその発明を行うことができた場合、その発明は進歩性がないと判断され、特許付与の対象にはなりません(A)。
職務発明とは、「使用者等(企業など)における従業者等の職務に属する発明」をいいます。特許法では、職務発明における発明者である従業員の権利を適切に保護するために、職務発明制度と呼ばれる特例が設けられています(B)。
また、特許法では、プログラムが発明の対象物として認められています。特定の構造を持つニューラルネットワークやその学習方法といった発明が、特許を取得した事例もあります(C)。
以上のように、発明は特許を取得することで特許権による保護を受けることができます。また、特許法における発明は、知的財産基本法における知的財産として定義されています(D)。

試験対策

特許法における発明の概要や新規性、進歩性、職務発明といったキーワードを覚えておきましょう。

問題8. 不正競争防止法に関する以下の文章を読み、空欄(ア)に入る語句として最も適切なものを選べ。

( ア )は、「業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報」をいう。営業秘密には該当しない価値のあるデータのうち、( ア )の要件を満たしたデータは、不正競争防止法による保護を受けることができる。

➡ P244

解答8. B

➡ P237

不正競争防止法における限定提供データに関する問題です。
限定提供データは、「業として特定の者に提供する情報として電磁的方法により相当量蓄積され、及び管理されている技術上又は営業上の情報」をいいます。たとえば、収集したデータを自組織内のみで活用するのではなく、組織間で共有することで、よりよいサービスを作り出すことができる場合があります。限定提供データは、このような場合にデータを不正競争防止法のもとで保護するための概念です。
不正競争防止法において、データなどの情報を営業秘密として保護するためには、その情報が非公知性、有用性、秘密管理性の3つの要件を満たす必要があります。つまり、情報が秘密として管理されており、公然と知られておらず、かつ有用なものであることが必要です。そのため、上記のような他社との共有を前提としたデータは非公知性または秘密管理性を満たさず、営業秘密として保護することはできません。そのようなデータのうち、一定の要件を満たしたものを限定提供データとすることで、不正競争防止法のもとで不正な流通などを規制することができます。
なお、限定共有データや限定配布データ、限定利用データといった用語は、不正競争防止法では定義されていません(A、C、D)。
以上のことから、(ア)には限定提供データが入ります(B)。

試験対策

不正競争防止法において保護の対象となるデータについて整理しておきましょう。

問題9. 独占禁止法に関する以下の文章を読み、空欄(ア)に入る語句として最も適切なものを選べ。

( ア )とは、公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれのあることをいう。例えばAIを用いたレコメンデーションによって商品の表示順位を決定するECサイトを考える。このAIを特定の商品が高く評価されるように意図的に学習した場合、出品者間の公正な競争が制限され、( ア )が問題となる。

➡ P245

解答9. A

➡ P237

AIと独占禁止法の関連性について問う問題です。
公正競争阻害性とは、公正な競争秩序に悪影響を及ぼす可能性があることを指します。昨今では、インターネットを介して類似したサービスや商品を一度に比較できるプラットフォームが数多く提供されています。たとえば、ECサイトや飲食店を一括検索できるウェブサイトなどがあげられます。そのようなプラットフォームでは、AIやアルゴリズムによってサービスや商品をランク付けし、掲載順序を調整することが当たり前のように行われています。しかし、AIの予測を偏らせるように意図的にAIを学習させるといったプラットフォーム提供者の行為により、ユーザーに不当な格差が生まれる場合があります。特に当該プラットフォームが巨大な場合には、ユーザーはそのプラットフォーム上での競争を余儀なくされ、公正な競争秩序が保たれなくなります。このような場合には、公正競争阻害性の有無や大小が争点になります。
なお、公正競争妨害性、公正競争制限性、公正競争干渉性という用語は一般的に使用されません(B、C、D)。
以上のことから、(ア)には公正競争阻害性が入ります(A)。

試験対策

AIと独占禁止法の関連性や公正競争阻害性について理解しておきましょう。

問題10. 以下の文章を読み、空欄(ア)(イ)に入る用語として最も適切な組み合わせを選べ。

経済産業省が公表している「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」では、AIの開発プロセスをアセスメント、( ア )、開発、追加学習の4段階に分け、それぞれの段階で個別に契約を結ぶことを提唱している。アセスメントや( ア )の段階では、学習済みモデルの生成可能性や求められる精度の達成可能性を検証する。また、開発段階で生成した学習済みモデルは、新たなデータセットを使用して追加学習しながら運用することが想定される。追加学習に関する契約としてはさまざまな形態が考えられるが、たとえば、( イ )の中に含めることができる。

➡ P246

解答10. C

➡ P238

「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」※1についての理解を問う問題です。
昨今では、数多くの企業がAIに関連する技術の開発や利用に取り組んでいます。急速に発展するこのような技術の開発や利用に関して、知的財産権の帰属や開発・利用に伴う責任の所在が明確でないなど、法整備が追いついていない部分もあります。このような状況を受け、経済産業省は、AI技術を利用するソフトウェアの開発・利用に際しての契約に関する基本的な考え方をまとめたガイドラインとして、「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を策定し、公表しています。
このガイドラインでは、AIの開発プロセスをアセスメント、PoC(Proof of Concept)、開発、追加学習の4段階に分類し、それぞれにおいて個別に契約を結ぶことを提唱しています(ア)。
アセスメントの段階では、NDA(Non Disclosure Agreement:秘密保持契約)を結んだうえで、データを想定どおりに収集できるか、モデルの学習を行うことができるかといった検証を行います。また、PoCの段階では、モデルの学習を行い、求められる精度を達成できるかどうかを検証します。
開発段階では実運用に使用する学習済みモデルを生成しますが、運用時には学習済みモデルをそのまま使い続けるだけでなく、運用中に得られる新たなデータを使用して追加学習を行うことも考えられます。運用時の追加学習に関する取り決め方にはさまざまな形態が想定されますが、たとえば、この点について保守運用契約に含めることが可能です(イ)。
AIの開発における契約では、契約の段階でその精度を保証しづらいことが問題となります。本ガイドラインのように開発段階を複数に分け、各段階における達成目標を明確にすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
また、NDAは、モデルの学習のために提供するデータといった秘密情報の取扱いについて規定したもので、本ガイドラインではアセスメントの段階で締結することを提唱しています。
以上のことから、(ア)にPoC(Proof of Concept)、(イ)に保守運用契約が入ります(C)。

試験対策

「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」における開発プロセスの各段階について、その概要や役割を理解しておきましょう。

参考

本問での「学習済みモデルを生成する」という表現は「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」に準拠していますが、一般的には「構築する」という表現の方がよく利用されます。

※1 「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/sharing_and_utilization/20180615001-1.pdf

問題11. ソフトウェアを開発する者をベンダー、ソフトウェアの開発を依頼する者をユーザー、AIに関連するソフトウェア開発の学習用データセットや学習済みモデルを成果物と呼ぶとき、これらの成果物に対する知的財産権の帰属に関する説明として、最も適切なものを選べ。

➡ P247

解答11. D

➡ P238

AIに関連したソフトウェア開発における成果物の知的財産権に関する問題です。
AIの技術を活用したソフトウェアを委託によって開発する場合、学習用データセットや学習済みモデルといった成果物の知的財産権の帰属が問題になります(A、B、C)。あらかじめ、事前にベンダー(開発者)とユーザー(依頼者)との間で、成果物の知的財産権の帰属に関する契約(ソフトウェア開発契約など)を締結することで、トラブルの発生を未然に防ぐことができます(D)。
また、このような契約の中で、知的財産権の対象にならないものも含めた成果物の利用条件を定めることも可能です。なお、複雑な利用条件を設定する場合は、別途ライセンス契約(使用許諾契約)を締結することもあります。

試験対策

AI開発を委託する際の成果物については、ソフトウェア開発契約などによって知的財産権の帰属や利用条件が定められることを覚えておきましょう。

問題12. AIに関連するソフトウェア開発を委託する際の契約に関する以下の文章を読み、空欄(ア)(イ)に入る語句として最も適切な組み合わせを選べ。

( ア )契約は、具体的な仕事の完成を目的とした契約である。一方、( イ )契約は、検証や開発といった役務の提供を目的とする契約である。AIに関連する開発では、契約時に学習済みモデルの精度や未知データに対する挙動を保証することが困難であるため、( ウ )契約を行うことが多い。

➡ P247

解答12. A

➡ P239

請負契約準委任契約に関する知識を問う問題です。
請負契約は、具体的な仕事の完成を目的とした契約です(ア)。成果物の納品の義務があることが特徴です。
一方、準委任契約は、検証や開発といった役務の提供を目的とする契約です(イ)。特にAIに関連する開発を行う際には、学習済みモデルの精度や未知データに対する挙動について、契約締結時に何らかの保証を行うことが困難です。準委任契約は、このようなAI開発の実態に沿った契約であるといえます。

以上のことから、(ア)に請負、(イ)に準委任、(ウ)に準委任が入ります(A)。

試験対策

請負契約や準委任契約の概要を覚えておきましょう。

参考

より正確には、準委任契約はさらに成果完成型と履行割合型に分類されます。成果完成型は、委任事務の処理によってもたらされる成果に対して報酬を支払うことが合意された場合の支払い方式です。一方、このような合意がされていない場合の支払い方式を履行割合型と呼びます。なお、寄託契約は、他人の物を保管するという役務の提供を目的とする契約です。

問題13. 以下の文章を読み、空欄(ア)(イ)に入る語句として最も適切な組み合わせを選べ。

( ア )は、インターネット経由でアプリケーション機能を提供するサービスの形態である。近年では、学習済みモデルに対する入出力を( ア )形式で提供するものも増えている。( ア )形式のサービスを提供する際には、サービスの利用条件を( イ )によって定めるのが一般的である。( イ )では、ユーザーが提供する入力データに対する知的財産権の帰属などが定められることがある。

➡ P248

解答13. B

➡ P239

AIをサービスとして提供する際の契約に関する問題です。
SaaS(Software as a Service)は、インターネット経由でアプリケーション機能を提供するサービスの形態です。近年では、インターネットを経由して入力データを受け取り、学習済みモデルの出力(予測や生成データ)を返すSaaS形式のサービスが数多く提供されています(ア)。
SaaS形式のサービスでは、サービスを利用するユーザーと個別に契約を交わすのではなく、利用規約によってサービスの利用条件を定めるのが一般的です(イ)。こうした学習済みモデルを利用するサービスでは、利用規約によってユーザーが提供する入力データの利用権や、知的財産権の取り扱いなどを定めている場合があります。機密性の高いデータを入力する可能性がある場合などは、特に注意が必要です。
PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーションの運用や維持管理を行うためのプラットフォームを、サービスとして提供するものです。また、NDA(秘密保持契約)は、企業間などで共有するデータなどの秘密情報の取扱いについて規定したものです。
以上のことから、(ア)にSaaS、(イ)に利用規約が入ります(B)。

試験対策

SaaSの概要や、SaaSにおける契約の形式について理解しておきましょう。

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